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細胞機能科学研究室のメンバー(2020年,10月撮影)左上: 金城 政孝 教授
お客様情報 | 北海道大学大学院 先端生命科学研究院 細胞機能科学研究室 金城 政孝 教授 |
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金城先生の研究室では細胞や生命のしくみを、生体分子間相互作用の解析によって解明することを目的とした研究を進めています。 ここでの研究では、蛍光相関分光法(FCS)や蛍光相互相関分光法(FCCS)を用いた、優れた精度の相関器が必要であり、当社ではその装置の開発を共同で進めています。 |
-細胞機能科学研究室の研究内容について、ご紹介をお願いいたします
学生が開発した蛍光相関顕微鏡と研究室の学生(4年生)
その解析のためにアポロ技研作成の相関器が活躍予定
金城 教授:私たちの研究室では、細胞生物学と生物物理学という2つの分野から、生体分子間相互作用の解析を進めています。簡単にいうと、細胞のしくみを明らかにするための研究で、タンパク質や核酸といった分子の配置や大きさ、それらの動き(速さ)を計測して、それぞれの関係性を解明していくことが目的になります。
細胞内には大小さまざまな分子が活動していますが、それぞれの分子がどのような関係性で成り立っているのか、未解明な点もたくさんあります。私たちは、顕微鏡や光検出器などの機器を用いて、いちばん小さな分子の動きまでとらえようと挑み続けており、生物学の発展に役立つ結果を出せるよう日々研究に努めています。
-アポロ技研のことを知ったのは、相関器をお探しになっていたときだそうですね。
金城 教授:そうです。先ほどもお伝えした通り、細胞内を見るには高性能な顕微鏡や光検出器といった機器が必要です。顕微鏡と光検出器について、日本には世界的に有名なメーカーがありますので、私たちでも手に入れられます。
しかし、検出したデータを処理する蛍光相関分光装置(相関器)については、私たちが求めるスペックの商品が市場になかったのです。
いま国内で市販されている装置だと、もっとも性能がよいもので「200ナノ秒(10億分の200秒)」まで測定できます。世界に目を向けると「15ナノ秒(10億分の15秒)」くらいの装置もあるようです。数字が小さいほど精度の高さを意味しますが、私たちが求めていたのは「1ナノ秒(10億分の1秒)」まで測定できる装置でした。
-大学でも新しい装置を開発しようと検討されたそうですね。
金城 教授:市場になければ、自分たちで開発するのも一手です。そこで必要になるのが、装置をコントロールするのに必要なFPGAの技術でした。実は、FPGAに詳しい研究者が近くにいたので、自分たちでも開発できるのではないかと考えたのです。これまでにも新しい装置を自らの手で開発したこともありましたし、FPGAに関しては私達も少しだけ知識を持っていました。
とはいえ、素人ですから限界はあります。いろいろ試行錯誤したのですが、なかなか精度があがらない。海外の装置メーカーの開発した相関器は十分な性能があるのに、私たちのつくるFPGAのコントローラの性能がまったく足りず、開発は頓挫したのです。
2~3年ほど悩み、光検出器メーカーに相談したところ、FPGAで優れた技術を有す会社があると紹介されました。それが、アポロ技研だったのです。
-一度きりの訪問でも、実際現場を見せてもらって信頼感が増大!
金城 教授:アポロ技研がどのようなことをしている会社か知らなかったので、開発現場を確認する意味で北海道から機会を作って訪問しました。その際、回路の素子の置き方や結び方など、いろいろ説明いただいたのですが、現場の人たちがこんなに頑張って開発しているのかという事実を知り、技術に対する信頼感が増しました。
私もそうですが、研究者という職業はわがままな人が多いので、こういう現場のことを知らずに簡単に注文を出してしまう。無理なことを頼んだなと、後で反省することもあるのですが、開発現場がいかに努力しているかを理解でき、こちらに依頼しようと思いました。
その後は、オンラインでの打ち合わせをメインに装置のテストを何度かおこない実験を重ねながら、現在も一緒に開発を進めています。
-FPGA技術を用いた蛍光相関分光装置ですが、現在5ナノ秒まで到達しています。現在も開発を進めていますが、これまでのところ当社の技術について、どのようにお感じでしょうか。
金城 教授:アポロ技研は、FPGAに関する知識や経験が豊富な企業ですから、共同開発のパートナーとして最適でした。なぜなら、5ナノ秒まで到達したのは本当にすごいことで、汎用的なFPGAの限界まで挑んでいただいていると思うからです。
私たちの要望はまだ満たさないとはいえ、すでに市場で手に入る装置にはない領域に達していますし、ここまで到達すれば、分子の物理的な動きだけでなく化学反応の動きなど未発見だった細胞内の生命現象も解明されていくのではないでしょうか。アポロ技研のFPGA技術によって、私たちの研究領域でも新しいステージに一歩前進できると、大変期待しています。
-FPGAの技術は、生物学の世界でも活用の場が増えていると感じますか?
金城 教授:学会に行くと、他の研究者の発表でもFPGAという単語を耳にする機会が増えています。たとえば、3Dプリンタを使って開発した装置を発表する研究者もいるのですが、その装置をコントロールするのにFPGAを活用したという話も聞きます。
FPGAは、私たちのような研究者が勉強して一定の知識や技術を得られたとしても、精度を求めるとなれば、ハードウェアの知識やコントロールするための知識もないと、開発するのは難しいんですね。こうしたことに悩んでいる研究者がいたら、「FPGAの分野で、こんなによい装置とメーカーがある」とアポロ技研を紹介したいですね。
学生が開発した蛍光相関顕微鏡と研究室の学生(修士2年)
その解析のためにアポロ技研作成の相関器が活躍予定
-今後のアポロ技研とのかかわりについて、教えてください。
金城 教授:新しい分野を研究する際には、それをサポートしてくれる新しい装置が必要になってきます。その装置が普及するには、使いやすさも一つのポイントになるでしょう。
その点でも、アポロ技研にはノウハウがあると思います。
FPGAに限らず、アポロ技研と一緒に共同研究をすることで、ハードウェアを制御する今までにない新しい装置、しかも使いやすい装置が誕生するのではないかと期待しています。
私たちも、今回とは別のプロジェクトで装置開発の話が進んでいますから、その際にもアポロ技研に力を貸していただければと考えています。
-研究が進むよう、今後もサポートさせていただきます。今後の研究展望についてはいかがでしょうか。
細胞培養のための実験室
金城 教授:今回の装置開発については、公的資金の研究成果最適展開支援プログラム(JST A-STEP)を活用しています。実際のところ、新しい装置を開発するとなれば多額の資金が必要になります。
予算をかければできることですが、自分達だけが研究を進めるための新しい装置を開発するのでは、意味がないと思うんですよ。この研究分野は、私ひとりでやっていても広がりませんから。
世の中に役立つ研究結果を出すには、私たちだけでなく、多くの研究者にも一緒に研究してほしい。そのためには、使いやすくて手ごろな価格の装置が必要になってきます。ですから、世の中に普及するような装置を開発できるよう、私たちも考えなければいけないと思っています。
-A-STEPの話がありましたが、限られた予算で研究を進めることも、研究者にとって重要なポイントですよね。
金城 教授:研究には予算が限られています。高精度な海外メーカーの装置を購入するには、膨大な予算が必要で、私たちには高額すぎて手を出せません。
でも、海外の研究者はそれを購入して研究しているわけですから、そもそも日本の研究者に与えられる予算が少ないという現実もあるわけです。研究者は世の中のために研究を進めているので、国は私たちの研究内容について、もっと理解を示してほしいと願っています。
線虫を飼っている学生。寿命の研究をしている。
-今回は取材を受けてくださり、ありがとうございました。
2020年は中止になったが,毎年,北海道大学(札幌)で国際サマースクール(HSI)を開催している。
ヨーロッパやアジアの学生が集まる。
金城 政孝(キンジヨウ マサタカ) 教授 プロフィール
《所属》北海道大学大学院 先端生命科学研究院 生命機能科学研究部門 細胞機能科学分野
《略歴》 一部抜粋
1.1997年 - 2007年 北海道大学 電子科学研究所 超分子分光分野 助教授
2.2007年 北海道大学 大学院先端生命科学研究院 教授
《研究分野》
1.ライフサイエンス / 分子生物学
2.ライフサイエンス / 細胞生物学
3.ライフサイエンス / 生物物理学
《共同研究・競争的資金等の研究課題》 一部抜粋
1. 多点時空間相関解析法による細胞内分子複合体研究
2. 相関分光法を用いた凝集体タンパク質の品質評価の確立
3. 空間相互相関解析による細胞内情報伝達機構解明法の確立
4. 相互相関分光法を利用した細胞内分子間相互作用の解析
5. 時空間相互相関法を用いた細胞核内ダイナミクスの解析